☆.。.:*・ 小壜水晶 .:*・°☆

「芙蓉さん、もう秋だね」
僕はもうマシュマロを乗せたココアなんて飲んでる。
本当はホイップクリームをのせてあるんだけど、今日は近くのケーキ屋さんで
新しいマシュマロが売っていたから買って来ちゃったんだ。
味は桃苺。溶けると中から淡いピンクのクリームがトロリと出てくる。
店主はさっそくちょっとビターなココアを出してくれた、
もちろんメニューにはないから僕だけの特別メニュー、上にチョコンとのった黄色いハーブが店主らしい。

テーブルの上には古いノートが置いてあった。
「芙蓉さん、これはなに?」
店主は小さなグラスを丁寧に拭きながら
「昨日あのカバンの中からでてきたんですよ。」
お店の奥のカバンが積んでいる棚の手前の
一つ古びたトランクが置いてある場所を指差した。
「じゃあ、そのカバンを売った人のもの?」
「そうでしょうね、私もはっきりこちらの商品を全て把握してるという訳
ではないので、
もしかしたらまだまだ何か入っているものが沢山あるのかもしれませんね」
ペラペラとめくっても何も書いて無い。
そして横には小さな小壜。
「この小壜は?」

話を聞くと昨日の夜中に遠慮なく扉をたたく音が聞こえて
店主がそっと扉を開けると1人の少年が立っていたそうだ、
"約束どおりの物"をもってきたから、
お店の中にある"チケット"と
それを交換して欲しいと言いうのだった。
その少年は見るからに長旅をして来たような格好で、
ただ首元に巻いていたスカーフだけが異様に月の光りを浴びて
キラキラするのもだから、とても目についたらしい。
でも古いチケットと言ってもどれだかわからない、とにかく
少年をお店に入れると、少年は迷わず
一番奥の棚に摘んである一つの小さな鞄から
一冊のノートを取り出した、
そして一、二度振ると中から小さな紙片がはらりと落ちる。
「そして、これだって言うんです。私はカバンの中にそんなものが
入っているとは知りませんでしたし、きっと先代のものでしょう、
そしてその先代とその少年が約束をしていたのだと思います。
少なくとも私はそう思っているのですけどね」
そして彼は店主をずっと見ているので、
了解を待っているのかと、どうぞ、というと彼は
「約束のもの」というものを名残りおしそうに手渡すと
"君もまったく酷い奴だな"といってそのチケットを持って
去っていったという。

「私はもうまったく何がなんだか」
僕はその話をワクワクしながらココアが冷めるのも気にしないで
聞いていた。

もちろん僕は尋ねる
「それで、彼はこれは何って言ったの?」

中には水晶
透明なその鉱石の先には雫がついている

「もう今は滅びてしまった"鉱石王国の第一王子の涙"だそうですよ、
夜の星々の光から隠れて流した涙は
暗闇でそっと光を放つそうです。
これは先代から聞いた話ですけどね。」
「涙?」
「昔はよく出回っていたそうですよ。
王国の再建のためにかなりの高額で取り引きされたそうです。
その努力も空しくまだ王子が若いうちに
王国は消えてしまったそうですよ」
「その、王子はどのような気持ちだったのかな、、、」

僕はもっと芙蓉さんと話をして行きたかったけど
今日は家にめったに来ない"お客さん"がくるから、準備をしなくちゃいけないんだ
買って来たマシュマロを半分に分けて店主に渡すと僕は席を立つ。

この古いノートは彼のだったのだろうか、
そして彼は先代の店主と今の店主を間違えた、、
あれ?
「あれ?芙蓉さんはいつからここの店主だっけ?」

店主は笑って答える

「忘れてしまいました」

僕は黙って微笑んだ
そしてそのまま店を出る
だって僕は芙蓉さんの年齢なんて興味ないんだから


Item:03
name:小壜水晶
今は滅びてしまった鉱石王国の第一王子の涙
が入っているという小壜






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